お嬢さんは、日本に居る時には烏の本家にお世話になっている。
鎌倉に別荘があるという噂を聞くけれど、俺にはよく分からない。
ただ、前にちょっと聞いた時に、別荘を世話してくれる使用人にお礼をしに、たまに寄っていると笑っていたのを覚えている。
中学生になって一年目。
お嬢さんは相変わらず上品で、本当に俺が年上なのか不安になってしまう。
いつも穏やかに笑んで、人への気遣いも出来て、
そして、ころころ鈴を転がすように笑う顔が、とても可愛らしい。
その顔が、お嬢さんが一番年相応な顔な気がして、俺は好きだ。
そんな、笑顔が素敵なお嬢さん。
なのに、今日はとても寂しそうな顔で小さく笑んでいた。
ふと、本家に下りる時、白薔薇の木の下にたくさんのお花と、
その真ん中に少し大きめの石がひとつ、ぽつりと置かれているのを見つけてしまった。
そして、いつもお嬢さんの側にいる、白い小鳥がいないことにも気付いてしまった。
だから、俺は、その小さな小さなお墓に手を合わせて、お嬢さんに会いに行ったのだ。