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水唱餞歌



お嬢さんは、日本に居る時には烏の本家にお世話になっている。

鎌倉に別荘があるという噂を聞くけれど、俺にはよく分からない。

ただ、前にちょっと聞いた時に、別荘を世話してくれる使用人にお礼をしに、たまに寄っていると笑っていたのを覚えている。


中学生になって一年目。
お嬢さんは相変わらず上品で、本当に俺が年上なのか不安になってしまう。

いつも穏やかに笑んで、人への気遣いも出来て、
そして、ころころ鈴を転がすように笑う顔が、とても可愛らしい。
その顔が、お嬢さんが一番年相応な顔な気がして、俺は好きだ。

そんな、笑顔が素敵なお嬢さん。

なのに、今日はとても寂しそうな顔で小さく笑んでいた。



ふと、本家に下りる時、白薔薇の木の下にたくさんのお花と、
その真ん中に少し大きめの石がひとつ、ぽつりと置かれているのを見つけてしまった。

そして、いつもお嬢さんの側にいる、白い小鳥がいないことにも気付いてしまった。


だから、俺は、その小さな小さなお墓に手を合わせて、お嬢さんに会いに行ったのだ。
by kaze-kara | 2008-11-28 00:08 | 黒ニ鳴ル噺
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  PBW「シルバーレイン」     雀宮棘の日常と思考。

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